第6回

世界を舞台に生きる「先駆者たち」

JELLYFISHは、ベトナム北部ハノイ市を中心に日本語学校・留学センターも運営している。「JELLYFISH Education」の設立背景、今後の展開などをベトナム代表のズウン氏に独占インタビューした。

日本に留学したきっかけは?

ロシアに留学経験のある父が、私をいずれヨーロッパに留学させたいと考えていたようで、私が幼い頃から、英語を学ぶ環境を与えてくれていました。その影響もあったからか、中学校から高校までは英語を専攻し、一生懸命、語学の勉強をしました。

努力をした甲斐もあって、高校3年生の時には、ベトナムで開催された語学コンテストの英語部門で、全国3位の成績をいただくこともできました。しかし、国費による奨学金での英語圏への留学の切符は、残念ながら手に入れることはできませんでした。留学をするためにはかなりの費用がかかることは分かっていましたので、あきらめざるを得ないと思い始めていた時に、ホーチミンにあるドンズ-日本語学校の日本留学プログラムを知ったのです。

この日本語学校のプログラムは、校長先生が自らベトナム各地の優秀な学生を選び、日本への留学を指導してくださるというものでした。日本ではありましたが、海外留学のチャンスが得られると思い、迷わずに決めました。先生方や周りの方からは、留学の大変さに案じ、心配する声もかけていただきましたが、日本でアルバイトをすれば、学費や生活費が支払えるとも聞いていましたので、夢をかなえるチャンスだと思いました。どうしても海外留学をしたいと思っていましたので、日本への留学を決めました

Thuy Duong(JELLYFISH Education 代表)

  • 1984年

    Nam Dinh 市生まれ

  • 2005年

    静岡日本語教育センター卒業

  • 2009年

    静岡県立大学ー経営情報学部卒業

  • 2011年

    横浜国立大学大学院
    国際社会科学研究科、経営学専攻、修士課程卒業

  • 2011年

    株式会社JELLYFISH入社

日本留学はどうでしたか?

今思い返すと、日本への留学期間中は、本当にいろいろと苦労の連続でした。特に大変だと思ったことは、言葉の壁、お金の問題、そして、大学受験についてでした。

今となっては、言葉の壁さえ取り除ければ、お金の問題も、大学受験についても難なくクリアできると思います。しかし、来日して日本語教育機関である静岡日本語教育センターに入学した当初は、日本語の知識も乏しく、日常の会話にも困るほどでした。生活のために、アルバイトをしようと何度も思いましたが、言葉の問題で断られてばかりでした。なかなかアルバイトができない状況が続き、スーパーには割引が始まる遅い時間に合わせて買い物に出かけるなど、節約した生活をしていました。しかし、ベトナムから持参した資金も残り少なくなってしまったので、コンビニでアルバイトをしている先輩から、賞味期限が切れたパンやおにぎりをいただいて、生活をしのいでいました。

ある日のこと、先輩の紹介で、やっとアルバイトを見つけることができました。それは、小さな飲食店の皿洗いの仕事でした。あまり日本語が分からなくてもできる仕事ではありましたが、その分、時給の低い仕事でした。そんな毎日の中で、やはり日本語が上達しないことには、日本で生活する難しさを感じ、それからは四六時中日本語の勉強をするようになりました。その結果、1年後には、日本語検定試験で1級を取れるまでになりました。

日本語が身についてからは、コンビニやスーパー、ファーストフード、レストランでのレジ、そして、ホールアルバイトもできるようになり、仕事探しに苦労することは無くなりました。徐々に、日本人の方を対象にしたベトナム語教室の講師や通訳、翻訳など、お給料の高い仕事にも就けるようになりました。

けれども、私はアルバイトをするために日本に来た訳ではなく、日本の大学で勉強することを目標に留学した訳ですから、そのことは、いつも心に留めていました。一番の目標は、日本の国立大学に合格し、経営学について勉強することでしたので、アルバイトの時間を調整しながら、最大限受験勉強に費やしました。その結果、念願の静岡県立大学経営学部に合格することができました。大学卒業後は、横浜国立大学大学院で修士号を取得し、留学を終えました。日本での留学期間中、さまざまな経験や知識を身につけられたことはもちろんですが、日本の文化を深く理解できたことや、多くの日本人の方とのネットワークを構築できたことが、私の日本留学における最大の成果であったと思います。

私自身、留学経験を振り返って考えてみると、成功させる鍵は4つあると思います。それは、「鉄の意思」、「節約」、「勤勉」、そして、「ネットワーク作り」です。どんなことでもそうですが、何事も目標を持って強い意志でやり続ければ、必ず成果はあらわれると思います。

卒業後、現在までの経緯は?

大学院で修士号を取得した後、そのまま日本に残って博士課程に進学するとか、大手企業に就職して日本で働くという選択肢もありましたが、私はベトナムに帰国することにしました。なぜなら、発展途上のベトナムには、想像以上のチャンスが潜んでいると感じたからです。

自分自身を見つめてみると、私の強みは「言語」、「日本への留学経験」、「経営判断力」だと思いました。そのため、言語や日本留学に関する仕事に携わりたいという思いから、ベトナムで「日本留学センター」を開設することを考え始めました。偶然にもその頃親しくしていた方から、JELLYFISHという日本の企業が、ベトナムで展開している日本留学センターの現地責任者を探していることを教えていただいたのです。

さっそく副社長の面接を受け、見事合格、2011年月に入社することができました。JELLYFISHグループのベトナム法人であるJELLYFISH Educationは、2010年11月に設立され、ちょうど半年くらい事業展開をし始めた頃でした。私がJELLYFISH Educationを引き継いだ当初は、まだ組織らしいものはでき上がっておらず、スタッフも3人だけでした。それから紆余曲折を繰り返し、今では、現地ベトナム人スタッフ12人と日本人スタッフ3人の総勢15人にまで成長し、会社としても軌道に乗ってきています。

JELLYFISH Educationで実現したいこと

JELLYFISH Educationは、ベトナムの若者に未来への成長のチャンスを与え続ける会社です。そのチャンスとは、主に3つです。第1に日本への留学のチャンスを与えること、第2に日本語学習のチャンスを与えること、第3にキャリアのチャンスを与えることです。

日本留学のチャンスを与えること。

まず1つ目の日本への留学のチャンスを与えることについてですが、留学の希望を持っている全ての学生を対象にしているわけではありません。日本へ行ってもきちんと勉強し、目標を持って成長できる学生だけを受け付けています。留学を希望していても、過去には、実際に勉強がおろそかになってしまったり、トラブルを起こしてしまったりする学生もいました。折角のチャンスですので、有効に活用していただきたいと思っています。

そのために私どもでは、事前にベトナムで学力テストや性格テストなどの選考テストをしっかりとおこない、より細かく選別させていただきます。ベトナムの地でより良い人材を選び、日本に送り出し見守ることで、大輪の花を咲かせてもらうことが、私たちJELLYFISH Educationの使命だと思っています。さらに、より良い人材を選ぶだけではなく、成長し実を結べるような環境を整えてあげなければいけないとも思っています。そのために弊社では、日本での学生サポート体制を整えています。学生の皆さんの学校生活や勉強、そしてアルバイトに至るまで、日常生活全般をJELLYFISH Educationではフォローしていますが、これは弊社の最大の強みでもあります。今後も「良い人材探し」と「良い環境作り」にさらに総力を注ぎ、3年をめどに、ベトナム1の日本留学センターになることを目指します。

日本語学習のチャンスを与えること。

2つ目である、日本語学習のチャンスを与えることについてですが、ベトナム人の中には、日本語を勉強したいと考えている人が多くいます。その理由は、日本に行きたいとか、日本語ができると就職に有利だとか、日本文化が好きだからとか人それぞれですが、実際のところ、ベトナム国内には、本当の意味での良い日本語学校はほとんどないと思っています。最良の日本語教育プログラムを作成し、日本人教員による質の高い教育を提供するなど、ベトナムの学生にとって、日本語学習のための最善な環境を備えた日本語学校の設立を立案しています。

キャリアのチャンスを与えること。

3つ目である、キャリアのチャンスを与えることについてですが、日本への留学を終え、母国ベトナムに戻ってくる学生や弊社日本語学校を卒業した学生たちに対し、人材紹介事業を目的としたグループ新会社「JELLYFISH HR」と密接に連携し、ベトナム国内で日本語能力を必要としている企業の仕事を斡旋したり、社会人向けには、ビジネス用日本語講座を開講したり、ビジネスマナーを学べる講座を開始する予定です。日本語教育から日本への留学支援、そして最終的にはキャリアのチャンスを紹介するに至るまでの、一貫性のあるサービスを提供していきたいと思っています。より良いキャリアを手にし、社会貢献できる日本留学生を増やしていくことが、JELLYFISH Educationの目指すかたちです。

お互いの特徴や強みを活かして

今振り返ってみても、JELLYFISHに入社してからの日々は、苦労の連続でした。8年ぶりにベトナムに戻ってきましたが、ベトナムの現状も分からず、また、社会人の経験がなかった私は、マネジメントの方法や仕事の取り組み方についても未熟で、正直どうしたら良いか分からない状態でした。

上司である肥田の指導や協力のおかげで、私自身随分成長させていただきました。また、日本側とベトナム側の双方のスタッフが、皆一丸となって業務に取り組んでくれたため、今日のような会社に成長できたのだと思っています。改めて、スタッフに感謝するとともに、今後さらに向上できるように新しいチャレンジを続けながら、JELLYFISH Educationも成長していきたいと思います。また、弊社はJELLYFISHグループの一員としても、JELLYFISH日本、JELLYFISHフィリピン、JELLYFISHインドネシア、そして、ベトナムでの新会社JELLYFISH HRと密なる連携を保ちつつ、お互いの特徴や強みを活かし高め合うことによって、グループ全体としての成長にも貢献していきたいものです。